以下は3月28日のことである。いよいよ解体の時が来た。幸いにも週末に現地へ見に行くことができた。もう解体も半ばまで進んでいると思っていたのだが、まだ家そのものには手が付けれらていなかった。中に入ってみると家具や畳などが処分されていた。そうこうするうちに重機が到着した。灯篭や手水鉢など、残すものを解体して重機で搬出したあと、いよいよ解体作業が始まった。
本当に見ていて悲しい体験だった。皮肉な事に、解体直前の整理で、この家が昭和六年に建てられたことや当初に建築されてから二回ほど増築されたことを示す書類や図面が出てきたのである。これらは聞いてはいたが直接的な証拠を見たことはなかった。他に選択の余地がないというのが私の結論だが、私の判断で築八十年にもなる家を壊すことの是非を思わずにはいられない。この家は、本家から分家した祖父が建てたもので、分家の歴史そのものだからだ。
多少の雨漏りなどはあったが、まだまだ柱や骨組みはしっかりしていた家だが、解体はあっという間だった。重機が梁や柱を引っこ抜く度にあっけないほど簡単に崩落する。縁側、玄関、座敷など見慣れた部分がたちまちに瓦礫の山に変わっていく。一時間ほどで家の約三分の二が無くなった。
今日の作業はここまでとのことだった。翌日は日曜日なので作業はなし。残りの三分の一は月曜日に解体するそうだ。残念ながら立ち会うことはできない。解体の前半に立ち会えた事を本当に幸運に思う。
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