やっと安藤忠雄設計の渋谷駅を見に行く事ができた。GAギャラリーへ「現代世界の建築家」展を見に行った帰りに副都心線へ乗ったからだ。「地宙船」と名付けられた卵型の空間や三層分を貫くコンコースからホームへの吹き抜け、自然換気の採用など話題が多い駅である。
しかし実際に受ける印象はごく普通の駅である。安藤の設計でもコンコースの壁や天井はコンクリ打ちっ放しではない。内装や各種の表示板、標識なども他の駅と変わらない。恐らく東京メトロとしての規格や規則があるからだろう。期待していた「地宙船」も確かに卵型の先頭部分が目立つように配置されているが側面の開口部がかなり大きいため、全体が巨大な卵型であるとは認識しにくいかも知れない。安藤の作品は閉じた空間構成であることが多いので、卵も大半が閉じた空間だと期待していたのだが、流石に駅ではそのような設計は無理だったようだ。
それでもよく見ればプラットフォームの空調設備が組み込まれた金属製のベンチ、トーチカのような券売機ブースや駅員室・案内所など、安藤のデザインが見て取れる。
この駅を見て、学生の頃の読んだある記事を思い出した。カーデザイナーの巨匠ジウジアーロのインタビュー記事だったと思うが、ジウジアーロは次のようなことを述べていた。「世間から見れば自分は全く自由気ままにデザインしていると思われているようだが、車のデザインには皆が思っているような自由度は無い。エンジンやギアの形状やサイズ、乗員の数などからドア、ボディその他の形状はほぼ決まってくる。それに加えて各国の法律や規制なども考慮すれば、自由にデザインできる部分はほとんどない。」ジウジアーロの卓越した作品を見たことがあれば意外に思うコメントだが、真実を突いているようだ。公共建築でも駅はかなり制約の多い方だと思う。また用途も極めてはっきりしている。実は独自性を出しにくい与件だったのではないだろうか。
2008年8月11日月曜日
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